例によっての兵庫爆食団恒例の福井ツアー、今回は現地で住職さんが迎撃してくれるそうで、まことに心強い。というのも、福井市にある宗家一条流西早稲田店分家の「雅」が引っ越しをして、店の場所が不確かだったり、そのほか地元各店の事情について、適切なアドバイスをいただけるだろう、からだ。 まあ、住職さんは、「海吉(みよし)」@岡山市の関係者でもあるから、まったく知らない仲というわけではないし。 大阪駅で待ち合わせ、かもねぎ団長たかお幹事長平団員か、と。途中米原駅でなごやんさんを拾い、北陸路を北へ。 「雅」@福井市郊外 以前は北陸道福井インターすぐ東の、ちょっと辺鄙な場所にあり、大繁盛しているとは言い難い店だった、事実排水関係で何か問題があるらしく、浄化槽の臭いが気になったこともあった。3回来店しているが、いかにもガンコらしいラーメンだったという好印象がある。 今度の店はインターから福井市内に続く街道沿いの郊外型一戸建て店舗で、黒い外壁に例の骨マークが大きく描かれている、店内は調理場を囲むカウンターと4人掛け席2つで、20数名のキャパだが、地元メディアに紹介された直後から混みだしたらしく、この日昼12時少し前で満席、4人待ちだった。清潔な調理スペースでは、見覚えのある店主さんとお母さん、アルバイトの女性2名が働く。 つけ麺と醤油・塩を注文、しばし待つうち店主はプラスティックの麺箱から2種類の麺を取り出し丁寧にほぐし始める、地元の製麺所の特注麺らしく、平細目ストレートと20番見当の縮れ麺なのだ、普通のラーメンには細く強く縮れた麺を使うのがこの流派の特徴の筈だろうが。やはりでてきたラーメンは、塩と醤油にストレート麺、つけ麺には中太縮れ麺というアンサンブルで、一同少し顔を見合いながら食べ始める。 つけ麺、かなり硬めの茹で上げだがこれはこれで悪くはない。つけツユは、醤油タレをお湯で割っている感じで、獣・魚系の旨味はほとんど感じられない、何より塩味が薄くとぼけた味付けだ。チャーシューが煮豚のタレ漬け込みタイプで小さい薄切り、これもガンコの特徴のほろほろ崩れるような巻きバラ肉大きなやや厚切り、を期待すると裏切られる。普通のラーメンに関しては一食として食べてないので辛口なコメントは控えるが、至って凡庸な、イメージだった。しかもこれが700円するのである。推定原価率15%程度、このまま流行ったら蔵が建ちますな。 食べ終わる頃になると更に客は増え、若いカップルや老夫婦を含めた家族連れなどでにぎわう。あの宗家一条流ラーメンを期待すると落胆は大きいが、地元の繁盛店としてやっていけるのならそれはそれで良い。ただし、客は馬鹿ではないから、このラーメンで何回も来てくれる常連客は続かない、と思う。そこら辺のことをどう考えようと店の勝手なのだが、ファンとしては非常に気になった。 「岩本屋」福井市光陽 前回お邪魔したときには非常に好印象であった、背脂こってり系醤油なんだけど、例の一条流をトンコツと魚系の旨味でてんこ盛りにした感じだったと記憶している。 店は調理場を囲むカウンターとテーブル席2つ、「雅」よりもゆったりとした作りだ。店内待ち客6人ほど、繁盛している。麺茹で盛りつけと3人掛かりで6人前から4人前ずつ作られるラーメンは、非常に丁寧な作業で手際よく、この手の大量生産を目指すラーメン店のお手本だろう。店員さんのかけ声も「來來亭」よりは静かだけど、ま、元気があってよろしい。 スープ(こってり味濃いめネギ多めで注文)は、味濃いめではなかった。タレの量が明らかに各丼とも同じ量で、隣の女のお客さんは普通で頼んでいたから、ちょっと疑問は残る。以前感じた強い魚系のダシの香りはずっと引っ込んで、獣系の旨味が強い、背脂は丁寧な下処理の上で作られていて、白くきれいで滑らかな仕上がりだった。麺、スープともにこちらの方がガンコ系だね。 ただし同行者達の頼んだつけ麺は、おおむね不評だった。そういえば、前回の同行者特に名を秘す滋賀の背脂のゾンビも、つけ麺を頼んで変な顔をしていたっけ、なんで初めての店でつけ麺を頼むか、理解に苦しむんですけど、ねえ。 「いちや」@福井工業大学近く ここもガンコ系になるそうです、食べに行ったなごやんさんが報告してくれました。当日は3周年記念セールだったそうで、ビールが百円でトッピング追加が無料だったり、なかなかのサービスだったとか。行くべきだったかも。 食べに行ったのは住職さんとなごやんさん、それ以外のメンバーは向かいのスーパーで、飲むヨーグルト1リットルパック(団長)アイス(幹事長)缶チューハイ(平)を買い込み、道行く帰宅途中の女子中学生を品定めしながらしばし待つ。 この店のラーメンについては、食べてきた2人があまりコメントしなかったので、きっとそのような感じのラーメンだったと推測されます、怒り狂ってはいなかった、とだけはいっておくけど。 車は市内へ向かう、途中福井の大仏があって、身の丈15メートルほどの仏様がお座りになり、左手に蓮の花の蕾をお持ちになっているのを見て、何か違う物を持っているのではないか、と。勘違いした不届き物がいたことは書いておこう。もっともこのあたり、片山津温泉や山中山代温泉も有りのの、本場だしね。 途中でクレープ屋「bon」が営業しているかどうか偵察、この店は土曜日にだけラーメンを出すのです、それもガンコの塩エビ油だったりするんだよねえ。店主さんは、東京高田馬場大正製薬前の店で2代目だった人だということです。 福井市近辺で何故、この宗家一条流系のラーメン屋さんが多いのかは、きっとこのあたりの事情によるものかも知れ無いなあ。そういえば北国街道国道365号線の南の起点は三重県四日市で、そこには、とある事情で正式に宗家一条流は名乗れないものの、そのラーメンをしっかりと受け継ぐ「鶴三(つるぞう)」@四日市市生桑があるのもなんかの縁か、と。 「見吉屋」@福井市中心部 なんでも住職の檀家さんのお店だそうで、繁華街から一本裏に入った通りにある普通の蕎麦屋さんですが、それはそれ、おろしそばがなかなかの出来でした。福井の蕎麦というと、永平寺そばのようないわゆるぶきぶきっとした田舎蕎麦が主流なんだろうけど、ここのはあくまでも滑らかで麺の厚さもかなり薄い、やや幅広だけど非常に上品な感じで、いかにも昔のお姫様がお食べになるような、ま、男4人で食ったんですけどね。 越前海岸に向かう途中の畑作地帯で、蕎麦の花が満開だ、このあたりは大麦や豆との連作になるので、この時期になるらしい。夏の酷暑の時期を除けば、蕎麦は通年で栽培可能なので、シーズンという感覚はなくなっても良いのだろうが、農家にとって見ると出荷の量や、時期によって価格が変動しやすいので、同じ地域では同じ時期に栽培をした方が効率がよいのだ。蕎麦屋や蕎麦好きの事情だけで、物事がすべて都合良く運ぶわけではないのだな。 もっとも近頃では、低温貯蔵の技術が進んでいて、一年中新蕎麦の香りが楽しめる、とまでは言えないが、かなりの処まで来ているのは事実だね。なによりも、蕎麦粉の風味は製粉とブレンドによって左右される。つまり使う蕎麦の実の状態、作る量によって、臼での挽き方も変え、はじめに出来てくる実の外側の部分と、芯の部分では成分が違うため、その粉の配合で「更級」「田舎」などの種類にする、というわけだ。手打ち蕎麦を看板にする店には、自家製粉のお店も多いと思うが、それらの作業を季節に合わせ毎日手順通りにこなして、尚かつ状態のいい蕎麦を打つことは至難の業(個人の力だけだけではほとんど不可能)だろう。栽培農家と契約して状態の良い蕎麦の実を取り寄せている、ことを売り物にしているお店は更に眉唾だ。そんなことを一年中出来る農家はない。米ですらそうなのに、生産量も少なく管理にも手間のかかる蕎麦の実を、今の市場価格通り出すことは不可能で、少なくとも2倍以上の価格差になるはずだ。普通に手打ちの十割もりそばが千円だとすると、2千円以上払ってそれを食べる必然はあるのか、と。いう難しい問題がそこにはある。東京首都圏の立ち食い蕎麦屋では、その一桁違う価格で湯がきたてのもりを食べさせるところがある、という事実も、更にこの問題を複雑にする。これは、作り手だけに安全で豊かな食環境を求めるだけでなく、食べる方の食事に対する誠実さが、農作物を生産する農業従事者へ、それを原料として食品に加工する業者へ、そしてそれを食事として提供するお店の方々へと、波及していかなければ解決しないことだ、と思う。自給自足の生活以外、解決しないという人もいるんだろうけど。 といってる内に車は峠を越えて越前海岸へと。 もう少したてば蟹の時期だし、雪解けの頃なら水仙なんだけど、今は赤海老(甘エビ)と越前赤ガレイ、さすがに綺麗なウルメイワシなどがショーケースに並んでいるけど、ま、爆食爆飲爆笑団は先を急ぐことにする。途中視界が日本海に大きく開けた岬で、地球が丸かったのを実感しつつ、夕方に大事な法事があるという住職さん(本職なのね)をお寺まで送り、次の目的地敦賀屋台ラーメン、を目指す。 「ふる里」@JR今庄駅南の高架下抜けてすぐ 店内普通に民芸風で、観光地の名前入り提灯が壁一杯並んでいたり、宇野重吉さんの写真や書がかけてあったり、お花畑や蝶々の写真が飾ってあったりする店は、たいていおいしくないのだけど、この店は特別です。今日から始まったという、辛味大根を使った田舎おろし蕎麦、そのままではかなり効くのでぬく蕎麦仕立てです、冷たいままでも良かったんですけどねえ。そういえば東池袋「大勝軒」の近くにあった「生粉打ち亭」の冬場名物メニュー地獄蕎麦は、この辛味大根のおろしと剥いた皮を細く切った物をのせて、それはそれは、胡椒でもなく唐辛子でもなく、なんというか和風武闘派的な辛さで、かなり手こずった(全部食べないと、次から作ってくれない)物でした、今は板橋の方に引っ越されたそうですが、詳細は不明です。 蕎麦湯もたっぷりいただいたあとは、本日第2のメインイベント、旧北陸本線あとのトンネルを抜ける新道に向かう。この道は、現在の北陸トンネルが出来る前の単線区間を整備して、国道8号線と北国街道365号線をショートカットする県道になっている物で、明治大正期に掘られたトンネルは本当に狭く、車のすれ違いは不可能で、人とのすれ違いすら危ない(もっともこんな処に来るのは鉄道ファンだけだから、それはそれで良いのかも知れない)という、曰く付きの道だ。今庄からとりついてしばらくは日野川の支流の谷沿いを遡る、鉄道の線路らしい緩やかなカーブは、やはり普通の街道とは趣が違うなあ。山間部のトンネルを入る前には必ずクラクションを鳴らし、対向車の有無を確認する。レンガで出来たトンネルの内部は上から地下水がしたたり落ち、薄暗い電球が点り、カーステレオのパコデ・ルシアのフラメンコとカマロンの歌声が不気味に響く。トンネルを出ると夕暮れの若狭湾が遠望でき、ススキの群生がみごとだ。杉津(すいつ)の峠から更に山側に入り、今度のトンネルには入り口に信号機が付いていた、単線トンネルの狭さは変わらないが、蛍光灯の照明が明るく感じられ、先ほどのトンネル通過時よりも心強い。30キロほど走り抜け、敦賀市内に到着する。 ショッピングモールで休憩、折から阪神タイガース優勝記念セールとかで、寅さんが着ているようなサマージャケット(あっちはダブルだったがこっちはシングル)上代15,000円を特価2000円で購入、今日も日が暮れてから肌寒くなったし、まあまあの買い物か、と。ここでかもねぎさんが、仕事の都合で列車で帰阪、ごくろうさまです。 敦賀駅からちょっと離れた市内中心部の、アーケードと駐車帯のある道路沿いに、夜からラーメンの屋台が営業を始める。前回の時には7店あったように記憶しているが、今日数えると3店が開業準備中だった。 「池田屋ごんちゃん」@通りの中程北陸銀行前 開店は8時から(通りの駐車スペースが空き次第ということらしい)の筈だけど、30分ほど前にトラックが到着、屋台といってもトラックが調理場で、すでにお湯が沸きスープのいい匂いがしている。スタッフがてきぱきと準備を始め、会議室からぱくって来たような折り畳みテーブルと丸椅子がセットされると、近く道路端で待っていた客が十数名ほどの客がバラバラと座る。グループごとに注文を聞いて、プラスティックの番号札を渡される、我々は52番だったけどそんなに客がいたわけではないので、関係者は注意するように。 丼を暖めテボザルに麺を入れ茹で釜へ入れる。丼のお湯を捨て、タレと小型スプーン一杯の白い粉を入れスープを注ぐ。適当に麺の湯切りをして丼に入れてならしチャーシューとシナチク、最後にきざみネギを散らして完成。 幾度と無く眺めてきた風景だけど、屋台だと許せてしまうのは何故かな。 開店直後ということで、スープな味は旨味が薄め、色は黄色くて濃そうなんだけどね。麺、いかにもの中華めん風味は鹹水の効果が絶大、当然柔目に茹でないと臭いが残りますな。食べ初めてしばらくすると、「はいよ。」とおばちゃんがチャーシューのへたの大盛りをテーブルに置く、これは無料トッピングで非常に良心的だな。もっとも煮込みスカスカチャーシューだけどね、あとは業務用おろしニンニクと紅生姜と胡椒がテーブルの上にあります。550円で、ちょっと値上げしていました。 そのあと明日日曜出勤だというなごやんさんを米原まで送り、高速料金のETCの夜間割引を有効に利用しつつ、大阪着10時半、皆さんご苦労様でした。 |